A級戦犯「分祀」求め初決議

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靖国神社をめぐる諸問題に関する神社本庁の基本見解

小泉首相の靖国神社参拝に対する中国などからの批判をめぐって、
所謂「A級戦犯」に関する問題が再燃している。
神社本庁は、戦争裁判の受刑者に対するわが国政府の一連の措置に基づき、
戦争裁判犠牲者を昭和受難者として合祀してきた靖国神社の姿勢を支持するとともに、
祭神の「分祀」の意味を誤解し、神社祭祀の本義から外れた議論がなされていることに対して、
深い憂慮の念を禁じ得ない。
神社本庁はかかる事態に鑑み、靖国神社をめぐる諸問題に関して、
次の通り基本的見解を示すものである。

①靖国神社は日本における戦没者慰霊の中心的施設である。
明治維新以来の国難殉難者、戦歿者をお祀りする靖国神社は、
戦後、国家と直接的な関わりが絶たれた後も、
遺族の悲願でもあった大東亜戦争の戦歿者合祀を使命として受け継ぎ、
創祀以来の伝統のもとに戦歿者に対する慰霊と感謝の祭祀を営んできている。
靖国神社はそうした歴史と伝統のもとに、
わが国の戦歿者に対する国民的な祈りの場としての役割を担っている。

②祭神の分離といい意味の「分祀」は、神社祭祀の本義からあり得ない。
神社祭祀における分祀(祭)とは、人々の崇敬心に基づいて新しく神社を創建したり、
あるいは神社に新たな御祭神を祀るために、
元宮となる神社から御神霊をお迎へするための祭祀のことであるが、
分祀が行われても元宮の御祭神や祭祀に何ら変わるところはない。
神社祭祀は、このような神道の神観念や霊魂観に基づいており、
「A級戦犯」とされた方々のみを御神座から「分離」するという意味での
「分祀」はあり得ないとする靖国神社の見解は当然である。
神社本庁は、靖国神社をめぐり、神社の尊厳に直接関はる御祭神の問題までが
政治やマスコミの場で軽々に議論されていることに対して、
遺憾の意を表明するものである。

③首相は内外からの干渉を排して靖国神社参拝を継続すべきである。
講和条約発効後、吉田茂首相以下歴代の首相は、春秋の例祭などに合わせての
靖国神社参拝を半ば恒例化していた。
首相や官僚の靖国神社公式参拝を合憲とする政府見解(昭和60年)も変更されていない。
また所謂「A級戦犯」を靖国神社が昭和53年に合祀し、その事実が報道された後も、
大平、鈴木、中曽根の各首相は靖国神社への参拝を継続していたが、
昭和60年の中曽根公式参拝までは「A級戦犯」合祀を理由とした中国からの批判は見られない。
日本の歴史と伝統に基づいた戦歿者慰霊の場である靖国神社に関わる事柄は、
本来憲法問題でもなく、ましてや外交問題にされるような性質の問題でもない。
政府においては、内外からの不当な圧力を排し、首相の靖国神社参拝を支えていくことが、
国民の負託に応える道である。

④所謂「A級戦犯」の合祀は、国会の決議と政府の対応に基づくものである。
講和条約後、わが国政府はすべての戦争裁判による死亡者に対して、
戦歿将兵と同様の扱いをしてきた。
日本国政府は講和条約第十一条の規定において「連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾」
したとされるが、これは、条約発効後も判決の効力を維持させるための措置であり、
わが国が裁判の正当性をも承認したことを意味するものではない。
その後、「戦犯」の釈放や罷免に関する国会決議は衆参合わせて四度にわたり、
遺族援護法、恩給法も数次に亘る改正が行われ、BC級を含むすべての「戦犯」
刑死者・獄死者の遺族、また「戦犯」本人もその他の戦歿者遺族、
軍人軍属と何ら区別されることなくその対象とされた。
靖国神社は、こうした政府の措置に基づき、「A級戦犯」を含むすべての戦争裁判犠牲者を
昭和殉難者として合祀してきたのである。
もとより、戦争裁判受刑者は国内法上の犯罪者ではなく、それらの裁判が、
戦勝国により国際法や近代刑法の諸原則をも考慮せず開廷され、
進められた不公正な裁判であったことを強く認識すべきである。           以上